職人 板場さん
こないだは、私の誕生日で、主人がご飯食べにつれていってくれはりました。
祇園の割烹のお店、うちのお得意さんです。
同志社をでた変り種の板場て言うて、川端康成さんが面白がってごひいきにしたはったお店て言うたら、お分かりかもしれません。
七十代の後半と違いますやろか。
料理が何より好き。
ほかに好きなものは、博打と女
ひとりで、こつこつと仕込みをしたはります。
時々抜け出して場外に走らはりますけど。
もう亡くならはった他のお店の大将が、息子さんに
「ええか、茄子の田楽はなぁ、味噌塗ったら終わりとちがうんやデ」
て、言うたはったけど、そういう細かい仕事をしていかはるお店が減っているのは確かとちがいますやろか。
ポン酢とかを自分で作らはらへんお店も増えているし、タレもみいんな、売ったあるし。
もやしの根っこと芽をとらはる中華のお店て、どんだけあるやろて思いますけど、それと、おんなし。
ここの冷やしトマトをよばれたけど、皮をむいて、あるものに浸けたはりました。
よばれても、わからしません。
けど、トマトの味が引き立って、しかも、美味しいなつてる。
ひとつ、ひとつ、そういう仕事をしたはるのですね。
東京の方には、京都の和食て言うと、
ミシュランの星をきにしはる人も多いやろうし、
本や雑誌に載ったんを参考にしやはる方も多いし、イマドキ、
ネットでの評価や、クーポンを重視しはるお人も、年々増えていくと思います。
そやけど、わたしらは、そういうもんは、あんまり、気にせえへん方です。
ここのお店に行こて思うたのは、まず
なにかの折に頂いた小鮎の炊いたんとかが、美味しかったさかい、です。
それと・・・
体調をくずさはりがちで、ペースメーカーを使うたはるけど、よう入院しやはるし、昔気質の板場さんが、どんどん減っていくなかで、お元気なうちに、て思うたんです。
カメラを持っていったけど、とても、出して撮らせてもらうみたいな無粋なマネはでけしませんでした。
残念ですけど、また、て思います。
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